私が高校生の頃、家の外の物置小屋に三毛猫が住みつきました。
冬は当たり前に氷点下20℃にもなる田舎の農村地域だったので寒さをしのいで、そのまま住みついたようです。
春になると数匹の子猫を産みました。
子猫は手放しで可愛いもので、いつも家の周りをチョロチョロと遊びまわっていました。
そのころ私は18歳になり、車の免許をとりました。
車は持っていなかったので父の車を借りて乗っていました。
ある冷え込んだ朝のこと。
エンジンをかけて車をバックさせると、子猫たちが逃げて行きました。
ボンネットの下から暖かいエンジンルームに潜り込んだのでしょう。
その中の一匹が白黒の子が地面の上でバタバタもがいてました。
エンジンの回転部分に叩かれたのだと思います。
(可哀想なことをしました。その後はボンネットを叩いて子猫たちに知らせてからエンジンかけました。)
この白黒の子猫は大人になるまで育ちましたが、この事故で下半身はほとんどマヒしてしまいました。
しかし、下半身がマヒしているにも関わらず、兄妹の中でもケンカが強く、いつも一番にゴハンを食べて一番大きくなりました。
結局、兄妹たちは権力争いに負けたのか巣立ってどこかへ行きましたが、白黒は居座って暮らしました。
白黒と呼んでいたのですが『ボス』と呼ぶようになりました。
なぜボスと呼ぶようになったかというと、こんな武勇伝からなのです。
近所の猫たちは前足2本のボスとケンカしても全く勝てず、恐れをなしていました。
正に無敵。
前足2本だけで生活するうちに普通ではない威力のネコパンチを身につけていたのかもしれません。
こんなこともありました。
姿は見えないのにボスの声が聞こえて来ます。
家の周りを探しても見つかりません。
ふと見上げると10m以上ある松の木のてっぺん付近に居ました。
前足だけで木登りするとは思わなかったのでビックリ。
さすがに降りて来られなくなって鳴いていたらしいです。
一番驚いたのはこの出来事でした。
ある晩、散歩から帰って来たボスが何か黒い物体を引きずっていました。
その物体はバタバタ動いてます。
それは大きなカラスでした。(生きてたので逃しました。)
下半身マヒの猫が一体どうやって羽のあるカラスを捕らえたのか不思議でした。
逆境が人を強くすると聞いたことはありますが、猫や犬にも同じことが言えるのでしょうか?
私は下半身マヒなのに無敵だったボスを猫ながらに、凄いやつと思っていました。
少々のことでヘコんでいてはボスに笑われているのかもしれません。
近所の猫や犬、動物たちの中では無敵だったボスですが、ある日、晩になっても帰って来ないので探しに行くと家からすぐ近くの
道路で倒れて死んでいました。
車に跳ね飛ばされたのです。
無敵のまま空に行ってしまいました。
猫なのに男らしい奴でした。
(実話です。)
オマケのココちゃん。
かなり猫が怖いです。
猫の出没ゾーンをサンポするとソワソワします。