犬は痛みをがまんします。
人間と違って、犬は目立つように痛みを表現しません。
犬は痛みを感じないと思う人たちがいるのも、そのためです。
環境と関連するさまざまな理由で、犬たちは痛みを意識しても表にあらわさないように、進化したのでしょう。
痛みをあらわすのは、人間の場合は環境に適応しています。
仲間たちが気づいて力を貸し、手当てをしてくれるからです。
しかし犬は肉食動物であり、彼らの狩りの手法の一つが、群れのもっとも弱い個体を標的にすることです。
犬が痛みや傷を表に出すと、反射的にほかの犬たちは捕食本能をかきたてられます。
これはハンターならではの反応です。
すでに弱っている動物、逃げる力があまりない動物を襲うほうが、こちらが傷を負う確率が低くなります。
痛みや傷につながる行動に犬が攻撃のチャンスを読みとるとすれば、犬の群れの中でも、仲間同士がそうした行動をおなじように読みとることは予想がつきます。
だから、犬が傷を負って苦痛を大っぴらにあらわせば、捕食本能をもつ群れの仲間から攻撃を受けかねません。
傷を負った犬を襲うことは、群れの順位争いにも火をつけます。
怪我をした犬より地位が低い犬は、ライバルの不運を自分が上位につくための絶好の機会と受け取ります。
それらの理由から、犬は進化の過程でじっとがまんすることを選びとったのでしょう。
痛みや傷を表に出さないようにして、自分自身と群れにおける自分の地位とを守ったのです。
犬は痛みを隠してふつうに動けるふりをします。
そのため痛がっていることが人間にはわかりにくいのです。
しかし、いくつかそれを知る手がかりはあります。
自分の犬をよく知れば知るほど、犬の痛みがわかるようになるでしょう。
〈犬が痛がっているのを見分ける方法〉
あなたの犬がクーンと啼いたり、悲鳴をあげたり、かん高くキャッと啼いたりするときは、痛みの激しさが、身を守るためにがまんする限界を超えたときです。
あまりに痛くて、もう誰に知られてもかまわないと思う状態なのです。
しかしたいていの場合、痛みの兆候はわかりにくいのです。
痛いときの犬は、運動しているわけでも、まわりの温度が高いわけでもないのに、激しく息をあえがせ、呼吸が早くなります。
体を小刻みに、あるいは大きく震わせます。
ひどく落ちつきがなくなり、何度も場所を変えて横になったり座ったりします。
あるいはその逆に、体を動かすのが非常に大儀そうになります。
さわられるとイヤそうにし、体のある部分を守ろうとするようすが見られ、いつになく攻撃的な態度までとります。
さわろうとしたり、近づいたりすると、うなったり威嚇的になったりします。
痛いところをなめたり、こまかく噛んだりすることも多いです。
食欲もなくなります。
ほかに、心拍が速くなる、瞳孔が開く、体温が上がるなどの兆候もあります。
がまん強い犬ほど重症化してから異変に気づくので日頃から注意が必要なのです。
『犬も平気でうそをつく?』スタンレー・コレン著より引用
我が家のビーグルが急性膵炎になったときには、まさにここに書かれているとおりでした。
寝ていても何度も向きを変え、次に震え出しました。
幸い大事に至らず安静にしていて少し状態が良くなって自力で回復しました。
本来だったら寝心地悪そうに何度も寝方を変えてる時に気づいてあげるべきでした。