マーシャ・ハミルトンのゴールデンーレトリーバー、バズビーは、11年のあいだ彼女にとってかけがえのない存在でした。
マーシャは、バズビーがいなかったら、人生を切り抜けられなかっただろうと言います。
流産して母親になる夢を断たれたとき、バズビーは家で彼女を慰めてくれました。
結婚生活が破綻したときも、バズビーは彼女の心を癒やす腹心の友となりました。
バズビーを心の支えにして、マーシャはつらい時期を乗り越えました。
大学にもどってコマーシャルーアートの勉強をしたときも、定職につくために必死で職探しをしたときも。
そして彼女が長年の憧れだった仕事にようやく就職がきまった数ヶ月後、バズビーは死んでしまいました。
その痛手から立ち直りかけたころ、マーシャは悲惨な事故に遇い病院に運ばれました。
高速道路で車が玉突き衝突を起こし、彼女は一台のトラックが積んでいた焼灼性の化学物質を浴びてしまったのです。
顔中に包帯を巻かれ、酸素吸入器がつけられました。
彼女の視力は回復できるのか?
もう一度ふつうにしゃべれるようになるのか?
だれにもわかりませんでした。
マーシャはおびえました。
2日めの晩、彼女はベッドで寝ている自分のとなりに、重いものが乗るのを感じました。
包帯をしていない左手をのばしてみると、懐かしい長い毛の感触を感じました。
バズビーそっくりのゴールデンーレトリーバーで、彼女は思わず泣きそうになりました。
その犬は3日間のあいだ夜になるとやってきて彼女を慰め、安心させてくれました。
4日目めに包帯を取ったとき、マーシャは目が見えるのがわかりました。
言葉がしゃべれるようになると同時に、彼女は病院で手配してくれたあの犬に会いたいと言いました。
ところが病院には犬などいなかったのです。
マーシャの目から涙がこぼれました。
彼女には、一番必要なときにバズビーがまたもどってきて、自分を助けてくれたのがわかったのです。
『哲学者になった犬』スタンレー・コレン著より引用
長い間一緒に暮らす犬や猫には特別なつながりを感じますね。