犬も人間同様、老化により脳の神経組織に起きる変化のせいで、行動に変化があらわれます。
犬の体と感覚能力に起きる変化は、行動や思考、あるいは性格にまで影響をあたえます。
筋肉、骨、関節に起きる変化は、ものごとにたいする反応や受け取り方と重要なかかわりをもちます。
年齢を重ねると、犬の筋肉の大きさや量は、その脳とおなじように減ってきます。
また老犬は関節炎をわずらうことが多く、これは痛みをともないます。
もっとも一般的な症状は、動きが遅くなる、脚を引きずる、脚を上げる、特定の関節をさわられると痛がる、などです。
患部が背中から腰にかけての場合(脊椎炎と呼ばれる)、犬は階段の上り下りをいやがるように(あるいは、できなく)なります。
それまでご主人のいるベッドやソファーに跳び乗っていた犬はそれができなくなり、座ったり走ったりすることすら、ままならなくなります。
つるつる滑りやすい木やタイル、リノリウムなどの床は、犬にとって歩くのに不安な場所になります。
そして動きが鈍るだけでなく、動きの変化がもたらす結果も重要です。
犬は社会的動物なので、彼らにとって群れや家族と居るのは大事な意味をもちます。
しかし老犬は飼い主と一緒に部屋から部屋へ動きまわることが困難になり、それが気分を落ち込ませます。
動きが鈍くなった結果、犬は社会的に孤立しはじめます。
これまでおだやかに暮らしていた犬が、飼い主がべつの部屋に行っただけで、飼い主と離れるのをいやがり分離不安の症状を見せるようになります。
わが家のウィザードが、年齢のせいで動きが鈍くなりはじめたとき、彼は不安なようすを見せました。
そこで私は彼が暮らしやすいように、いくつか具体的な手段をとりました。
まず私は(妻を面食らわせはしましたが)、彼が生後6ヶ月のときからねぐらにしていた私のベッドに階段をつけ、ウィザードが上がれるようにしました。
つぎに、家の真ん中の床あたりに彼用のクッションを置いて、私たちがリビングにいるときも、キッチンとのあいだを往復するときも、ウィザードがその場所から眺められるようにしました。
そのおかげて彼は孤立することなく、仲間の一員という感覚がもてたのです。
老いた犬がおだやかさや落ちつきをなくし、猛々しく攻撃的になる場合もあります。
筋肉や関節の衰えは、苦痛をともなうことが多いのです。
犬は痛みがあるとき、神経過敏になります。
この過敏になった神経が、犬の性格を変えてしまう場合もあるのです。
老化にともなう痛みのせいで、客人や家族や家にいるほかのペットにたいして、犬がそれまでにない攻撃的な態度をとることがあります。
それは犬が、痛みの原因は自分にさわった相手にあると思ってしまうからなのです。
老犬がそれまでより怒りっぽくなる原因の一つは、動きが不自由になったためです。
たいていの犬はいやな目に遭うと、自然な反応として、その原因となる人間や動物や環境から離れようとします。
自分を守るには、走って逃げ出すのがいちばんです。
しかしあいにく老犬は、その手段がとれません。
痛みと、動きの不自由な身体のために、犬はその場からげ去れないのです。
危険や脅威を感じた場合、自分のまわりの狭い縄張りを守ろうとする老犬は、牙をむいて警告したり、実際に攻撃にでたりするようになります。
問題なのは新入りの子犬や、よく動きまわる人間の幼児が家にいた場合です。
老犬にじゃれかかったり、触ろうとしたりすると、老犬は脅威やストレスを感じはじめます。
老犬は容易にその場を立ち去れないので、なんとかして子犬や子供を追い払うしかないのです。
そこで敵意をしめし、攻撃に出ることになります。
というわけで、飼い主が注意しなければいけないのは、老犬と若い成犬との接触ではなく、子犬や幼児との接触なのです。
かんたんな解決法は、老犬に安全な『巣穴』をあたえること。
犬小屋のようなところに入れておくのが良いでしょう。
中に入って扉を閉めておけば犬は安心でき、小さな指を柵の中に突き入れたりしないかぎり、子犬も子供も安全でいられるのです。
『犬も平気でうそをつく?』S・コレン著より引用
老犬だから大人しいのではなくて、逃げられないから我慢しているという場合もありえるのですね。
老犬じゃなくても幼い子供はムチャな触り方するから気をつけましょうね。
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