私が子どものころ、祖父のジェイクが世界最大の謎の一つを、つぎのように解説してくれました。
『犬と猫は、もともとは同じ動物だったんだ。ただし、ちがっていたのは犬がすべて(雄)で、猫はすべて(雌)だったこと』
『だから、犬は猫を追いかけるのさ!』
6歳の頭で考えてさえ、その話は本当とは思えなかったのですが、犬と猫の関係について広く伝わっている数々の説も、祖父の民話以上に信憑性があるとは言いがたいものばかりです。
たいていの人が、犬と猫は昔から仲が悪く、一緒に暮らすのはむずかしいと考えています。
あるカップルが『大と猫のよう』と評された場合は、喧嘩がたえないことを意味します。
しかし、最近の調査結果によると、アメリカの家庭の36パーセントが少なくとも犬を1頭飼っており、その家庭の54パーセントが猫も飼っています。
犬と猫がたがいにうまく折り合えていないかぎり、この結果はでないでしょう。
犬が猫を追いかけたり猫にむかって吠えたりする姿をよく見かけるため、犬は生まれつき猫が嫌いと思われがちです。
この追いかけ行動には、進化論的な理由があります。
脅威を察知した猫の一般的な反応は、一目散に走って安全な場所へと逃げることです。
かたや犬は、走って獲物を捕らえるハンターとして進化したので、素早く動くものを見ると、本能的に追いかけます。
つまり、走って逃げようとする猫の本能が、追いかけようとする犬の本能を刺激するのです。
ときには、犬と猫の絆が一瞬に結ばれ、終生にわたる友情が生まれることもあります。
その例が、イギリスのブリストルでの物語です。
ある寒い日に、乱暴な子どもの集団が子猫を盗み出して池に投げ込み、おぼれる様子を眺めておもしろがっていました。
そのとき突然プーマという名のラブラドールーレトリーバーが池に飛び込み、子猫をくわえました。
プーマは事故だと思ったらしく、子猫を岸辺に上げると少年たちの足元に置きました。
彼らはそれをせせら笑い、プーマを足蹴にして遠ざけると、猫をまた池に放り込んだのです。
犬はもう一度水に飛び込んだのですが、今回は子猫を池の反対側の岸に運びました。
そして陸に上ると、子猫をくわえて家まで走りました。
プーマの飼い主がドアを開けると、彼は家の中に駆け込み、子猫を暖房機のそばに置きました。
そして子猫から絶対に目を離そうとしなかったため、家族も根負けして猫を飼うことにしました。
子猫は、ラッキーと名づけられました。
ラッキーとプーマは、何年ものあいだ、一緒にまるくなって陽射しの下で居眠りをして過ごしたのです。
『犬があなたをこう変える』スタンレー・コレン著より引用
ジェイク爺さんの民話に置き換えると、
池で溺れていた女性とそれを助けた男性が、後に結婚して仲良く幸せに暮らしたハッピーエンドの物語。ということでしょうね。